【情報発信】商店街DX化事業「ローカルエリア・プロモーション」
目次
▶商店街の『DX化』に踏み切った理由
令和4年時点で、インターネットの接続端末の世帯保有率は97.3%であり、その内訳は「スマートフォン」が88.6%、「パソコン」は69.8%と、非常に高い数字を示しています。(総務省調べ)
ネットが普及した現在、「スマホで知りたい情報を検索し、週末の計画を立てる」という行動が消費者のライフスタイルとして一般化したことから、発信力の強いサービスやスポットに注目が集まる一方、ネットに載っていなかったり検索に引かからないお店は、WEBユーザーにとって「世の中に存在していないのと同じ」ともいえます。
しかし現実問題として、岡崎の中心市街地商店街(以下、康生エリア)の小規模事業者の中には、自社のホームページやSNSなどを上手く活用できていないお店が多くみられ、エリアを包括的に見渡すと消費者のライフスタイルの変化にうまく対応できていない商業者が非常に多いことが分かります。
発信に強い1割未満のお店や施設ばかりが度々話題に取り上げられる中で、約9割以上を占めるその他大勢の個店は情報の海に沈んでいる現状は、WEB上に『まち(エリア)』としての姿が見えていないという事を示唆しています。
このような、目立っている”ごく一部のスポット”だけでなく、”エリア全体”としての利用を増やしていくためには、WEB上にエリアを丸ごとアップロードする、つまり、消費者の行動の決め手となる”スマートフォン”と”まち”を結び付けることで『まち(エリア)を可視化する必要性』を強く感じ、このことが『商店街のDX化』に取り組むきっかけとなりました。
しかしながら、エリアを丸ごとDX化するには様々な課題に向き合う必要があります。
現状の乱立する情報を整理して、ユーザーの不便を解消する方法。発信に苦手意識を持っている店舗のフォローアップ。また、発信を継続することで検索に強くなるWEBの特性上、取り組みを長く続けていける体制づくりやスキームの模索など、直面する問題は少なくありませんでした。
そのような経緯からまちづくり岡崎では、ただ ”まちの情報” を集めたポータルサイトを作るのではなく、これら諸問題を一つ一つ解決していくためのプロセスを探り、ノウハウに落とし込む 商店街DX化事業「ローカルエリア・プロモーション」を2021年より本格的にスタートすることになりました。
▶商店街DX化事業の目的と「頭の中の回遊」
(マップ引用:岡崎市HP)
商店街のDX化による「まちの可視化」は、インターネット上での商売ではなく、実際のまちやお店に来てもらい、事業者の売上やまちの利益に繋がる事を目的としています。
康生エリアの周りには、大きな川や岡崎城のある公園、大型の図書館などの集客施設がいくつかあり、年間を通して開催されるイベントには多くの人が訪れています。その隣に位置する康生エリアは小さなお店が集まる地域であり、いちコンテンツとしては集客力が弱い傾向にあります。しかしながら、イベントを目的にエリアに足を踏み入れた人が、事前に「次の情報」を手にしていれば、まちへ少し足を延ばして、カフェで休憩する、他の観光スポットに立ち寄る、地元のお店でお土産を購入するといったことも可能になります。
イベントなどの強い目的(第一目的)を持つユーザーに対し、飲食や買い物、散策といった次の目的(第二目的)に繋がる情報を渡して複数スポットの回遊を促すことで、エリアの利用を「点」から「面」にフェードしていこうというものです。
これらを念頭に、あらためて該当エリアの”発信”を観察してみると、各イベント団体や施設、多くの店舗情報がそれぞれ「個別」に発信することで情報が乱立し、まち情報が欲しいユーザーにとっては非常に不親切であることがうかがえました。もし消費者が「イベント→ランチ→買い物」といった行動パターンを思い浮かべて情報を探そうとしたら、HP・情報サイト・SNSなどを自発的にいくつも検索する必要があります。これでは情報を探す側の手間もかかり、目当ての情報に行きつく前に諦めてしまうケースも多いと考えられます。
また一見便利に見えるSNSも、受け取れるのは自分がフォローしている先の情報に限られるため、得られる情報量はわずかであることも気になりました。
このような「ネットの検索難民化」を解消するためには、以下のような情報インフラの整備が必要と考えられます。
- エリア内の情報を一本化する窓口を設置
- さまざまな情報をジャンル別に体系化
- 興味のある情報を「連鎖的」に取得する仕組み
- 迷わずたどり着ける便利なルート案内の表示
人がどこかへ行く時には、事前にネット等を調べて情報を探し、実際に現地へ行く前に計画(=頭の中でまちを回遊)します。この『頭の中の回遊』を促すための仕掛けづくりを、エリアの情報プラットホームを構築する際の基本方針としました。
こうして2022年1月にオープンしたのが、岡崎・康生エリアのポータルサイト『ぽけろーかる』です。興味のある一つの記事から展開して「あれもいいね!これも面白そう!」と、エリア内にあるさまざまな情報をストレス無く得ることができる弊社オリジナルのサイトシステムとなっています。
▶【商店街DX化事業】ローカルエリア・プロモーションとは?
さて前述の通り、このローカルエリア・プロモーション事業の主旨は、 ”まちの情報” を集めたポータルサイトの運用ではなく、DX化を行う事でエリア内の「人」と「情報」のネットワークを醸成し、まちの価値を可視化していく取組みといえます。
●「人」のネットワークづくり
この情報プラットホームにはさまざまな機能がありますが、大きな特徴のひとつとして、エリアに属する ”市民・店舗・拠点管理者” などが発信者として参加できる点にあります。
『ぽけろーかる』では、情報発信の協力者に対し”専用アカウント”を渡し「公認ライター・加盟店舗」として発信に協力してもらう手法を取っています。まちを盛り上げたい市民、催しをお知らせしたい施設・公園の管理者、エリア内で活動するイベント主催者、エリア内で営む商業者等がプラットホームを通して繋がり、地域の中に人のネットワークがゆるやかに形成されていきます。
●「情報」のネットワークづくり
また、このようにして蓄積された様々なデータを活用することで、行政や観光協会との連携体制を作り出す動きも積極的に取り入れています。
特に、まちに関するイベント企画などを行う際には、店舗の情報は必須です。『ぽけろーかる』自体がエリア内に存在する店舗のデータベースであることから、(写真や情報の提供・店舗への確認・データの取りまとめ)といった業務を担う形の連携関係が出来上がり、エリア内の情報を効率的に活用していける状態を作り上げていきます。
▶『商店街DX化事業』のメリットとは
ローカルエリア・プロモーション事業は、地域の商業者・サイトユーザー・中間支援組織の3者にとってさまざまなメリットが得られるスキームとなっています。
▼地域の商業者が得られるメリット
①利用しやすい価格のWEB媒体
→サイト加盟店になると、年間3万円という利用しやすい価格で高性能な発信サービスを利用できます。
自店専用のショップページ・アカウントが発行され、(簡易ホームページ、店舗ブログ機能、商品紹介、ギャラリー、応援口コミ)といった機能を使って、店舗自らがマイペースに発信できるようになります。
管理ページは簡単で、基本的には「専用の入力フォーム」 に沿って文字や写真を入れ込むだけ。スマホから操作も出来るので、日々のリアルタイムな情報をサッと情報に落とし込むことができます。
②発信格差をなくしてPRできる
→サイト加盟店はTOPページへダイレクトに新着記事を投稿して、店舗PRを行えるようになります。
例えば、まちづくり会社が運用するポータルサイトに、地元の情報が欲しいサイトユーザーが集まっている場合、SNSやHPで細々と発信していたお店にとっては、一定数のユーザー(新規顧客)に情報を届けることのできる「発信チャンネル」が一つ増える事になります。
WEB上でフォロワーやユーザーを増やすのは、苦手な人にとっては至難の業ですが、その部分をまちづくり会社が担う事で発信格差が縮まり、人の目に付く場所で自店PRが出来るようになります。
③Google紐づけで検索順位UP
→サイトのショップページにはGoogleマップが紐づけされています。
例え日々の発信をしなくても、自店のページを作って置いておくだけで、本元のポータルサイトの評価に引っ張られて検索エンジンの中の評価が上がってきます。これは、情報発信が苦手でやっていない店舗ほど顕著に効果が表れます。
新しくお店をオープンしたけれど、お金が掛かるからHPは持たずSNSだけで発信をしようと考えている人も、ショップページをHP代わりにすることで「お店の固定情報」をWEB上に持つ事が出来ます。これは、SNSの「情報が流れてしまう」というデメリットを補ってくれます。
▼サイトユーザーが得られるメリット
①オールインワンでまち情報をゲット
→ユーザーにとっては、オールインワンでまち情報を得られるというメリットがあります。
従来の情報ツールは“グルメ”、“イベント”等の「カテゴリー」で分けられたサイトが多いですが、ぽけろーかるは「エリア」で括るため、目的地を定めた後にプラスで行きたい場所を簡単に探すことができます。
ユーザー心理を考えて作られており、歴史が好きな人には関連記事や位置情報、イベントを知りたい人にはイベント一覧など、エリア内の興味のある情報を関連付けて見つけ出すことができます。
②目的地探しが簡単なまち歩きマップ
→全てのトピックス記事の下には、記事内で紹介されたスポットを示すマップが付いてます。
位置情報をONにすると、現在地から目的地までのルート案内も表示されるようになっていて、まち歩きのナビゲーションにも活躍します。
また、ジャンル別検索の付いた「まち歩きマップ」を使えば、目的地の周辺にある店舗やスポットを簡単に探し出すことも出来るので、「イベント+食事+買い物」といった複数の目的をエリア内で組み合わせて計画を立てる事がずっと楽になります。
▼中間支援組織が得られるメリット
①まち情報のデータベース化
→お店やスポットを巡る企画は地域の活性化イベントでは定番ですが、企画の度に情報を取りまとめるという大変さがあります。そんな中でポータルサイトは、お店情報のデータベースである「資産」になります。
自分の企画に使うだけでなく、お店情報を必要としているイベント主催者との連携体制づくり、委託業務として情報を収益に変えるなど、展開の方法もさまざま。地域で活動する中で、生きた情報が集まるプラットホームを握る事は、支援組織の強みとなります。
②人材発掘や地域での連携づくり
→従来のポータルサイト運用では、管理者サイドが情報を集め発信するという一方通行になりがちでしたが、まちづくりとして取り組む場合は人の巻き込みが必要不可欠です。
SNSが一般的である現在、発信慣れしているだけではなく、カメラや文章に特技を持つ人や、多くのフォロワーを持つインフルエンサー的な人材も比較的簡単に発掘できます。
「まちづくりに関わりたい」「自分がしている活動を広めたい」といった人達と ”発信” をテーマにゆるい協力関係を築くことは、無理なく息の長い人の巻き込みを可能にします。
③支援対象者との密な関係性づくり
→エリア内の商業者を支援する組織にとって、どこまでを支援対象にするかは非常に悩み処です。かといって、ごく一部の情報しか載っていないポータルサイトでは、地域の情報窓口として成り立ちません。
その問題を解決するためにシステム内には(無料/有料)で店舗情報を切り替える機能が付いており、無料店舗と加盟店(支援対象)をきちんと線引きができる仕様になっています。加盟店になってもらう事で、サポートを理由にいつでも店に顔を出せるようになり、発信のスキルアップや宣伝の相談を通して「支援対象者」と密な関係性を作ることができます。
▶取組みを持続させるための収益モデル
情報プラットホームは作って終わりではなく、継続的なプロセスを通して様々な効果が表れるため、運用のための自主財源が必要となります。そのため、ローカルエリア・プロモーション事業では、補助金などに頼らず民間の費用で運営できる収益モデルを採用しています。
●サブスクリプション型の「加盟店制度」
→これは広告宣伝にあまりお金をかけない、発信に弱い個店(弊社の支援対象者に該当)を主な対象とするサービスで、多くのお店から「定額サービス料」を少しずつもらう形となります。
サブスク型ということで年間利用料を一括で徴収しますが、一度ショップページを作れば後は微修正のみで労力を掛けずに引き継いでいけること、またWEBページの作成という事で人件費以外が掛からないことから、これが毎年の安定的な収入となり支援の継続を可能にしています。
●臨時収入としての「業務委託」
→事業を進める中で得た「資源」が、仕事へと結びつくこともあります。一つ目は人材資源である「公認ライター」の派遣業務です。カメラの撮影技術やライティング能力を持つ人材を有料で派遣し、取材のディレクション業務を行うことなどがあります。
また、情報資源である「サイト内の店舗データベース」を使用したい旨の依頼があった場合は、店舗への確認や情報の取りまとめ業務が仕事になります。もちろん、サイトへのPR広告を有料で行う場合もあります。
このようにサブスク収入と業務委託の組み合わせることで、本事業を自主財源として育てる試みを行っています。2023年の時点で加盟店は約60店舗あり、年会費収入は約200万円。また、2022年度の業務委託収入は約150万円程度、合計で350万円の収益事業となっています。
▶『商店街DX化事業における成果・波及効果の紹介
成果①:サイトアクセスや、まち情報の配信実績
現在『ぽけろーかる』は、毎日1000~2000人のアクセスがコンスタントに集まる地域密着型サイトに成長し、人気の記事一本に対し1日で最高7000viewが集まる事もあります。
また、ユーザーの約8割が岡崎市在住であることから、地域の利用者・リピーターに対する『エリアの窓口サイト』としての役割も担い始めています。
情報発信の実績としては、約1年半の運用で、まちの話題を知らせる『ライター記事』を約570記事、加盟店による『店舗ブログ』が約680記事、テーマ別にまちを知らせる『特集記事』を約210記事と、1500件近くの記事をエリア情報としてお届けしています。(2023.7月現在)
成果②:知名度が低い店舗の、WEB検索によるボトムアップ効果
約1年の運用成果として、WEBを活用していない店舗(HPやSNSによる発信を積極的に行っていない店舗)を検索した際、ポータルサイト『ぽけろーかる』の加盟店ショップページが上位表示されるようになり、発信に弱い店舗をある程度一括でボトムアップすることに成功しました。
「康生+○○」のようにエリア名を含む串刺し検索で当サイトの情報が上位にあがってくる他、特徴のある店舗に至っては、「岡崎市 格安カット」といった大まかな串刺し検索などでも上位10件以内に表示されるなど、WEBサーチにおいて一定の成果を確認しています。
成果③:大河ドラマの観光客をまちへ流す、回遊策としてのサイト活用
2023年の大河ドラマ「どうする家康」の放映にあたり、岡崎市では観光客の誘致施策に力を入れています。
観光拠点となる『岡崎公園』に設置された観光案内所では、公園から中心市街地への観光客の誘導策として、ポータルサイト『ぽけろーかる』による「歴史スポット+周辺の店舗情報」をテーマにしたダイジェストBOOKを配布することで、エリア回遊の一助としています。
2023.1月から現在まで約2万人の観光客に対し、近隣のグルメ・観光・みやげのスポットなどの情報をダイジェストBOOKを使ってご案内しています。
成果④:加盟店データベースの活用による、他団体との共同実績
2023.7月時点で、『ぽけろーかる』は61店舗に加盟いただいており、その店舗情報は写真データから店舗の詳細までショップページに蓄積されています。この『店舗情報データベース』を活用し、他団体との共同企画も個店支援の一環として進めています。
2022.12月には、まちの各所にライトアップ拠点を設けて通りを歩いてもらう「おかざき宵まいり」を観光協会が開催しましたが、グルメクーポンを使った周辺の散策・回遊企画において、付近の飲食店情報を『ぽけろーかる』の加盟店データベースを使って取りまとめし、提供する形で事業協力を行いました。
このような”店舗のデータベース”を使った仕事依頼や、相互リンク(イベントチラシに「まち情報」としてサイトQRコードを掲載など)の声掛けは増えており、「おかざき宵まいり」「高校生まちづくりプロジェクト」「QURUWAと暮らす」といった企画で活用されています。
成果⑤:ポータルサイトで発掘した人材の、活用と展開
『ぽけろーかる』では、まち情報を発信する一般の公認ライターが約20名在籍します。
その中で、写真撮影やライティングが得意な人材には、岡崎市のECモール「おかふる」にライターとして派遣する、人材派遣業務も行っております。
『ぽけろーかる』での取材経験を活かし、店舗への取材~データの取りまとめ業務を”ライター+弊社スタッフ”のチームで行う形で、ECモール運用業務の一部を担っています。これはポータルサイト『ぽけろーかる』の運用を通した人材発掘・人材育成の、大きな成果の一つとなりました。
▶『商店街DX化事業』を学びたい/『システムの導入』に興味のある方のための詳細ページ
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